鯰に会えず


四日。BF氏が帰郷するとのことで、お互いに自由になる日が四日だけであり、スタジオ終わりで栃木へ行くことになっていた。が、撮影は全く終わる気配なく、私も全く帰れる気配もなく。夕方になり漸く昼食休憩に入り、携帯電話の受信箱を開くと「時間が遅いと無理」とのメール。どんなに急いでもあちらへ着くのが二十一時半になってしまうため、残念ながらお流れ。
二十時半、ようやく帰路、スーパーマーケットで割引シールの貼られた寿司を買い、レンタル屋を約一時間彷徨う。何かみたいけれど何もない、何かしたいけれど何もない、ような、虚ろなかんじで店内を漂流。着信音が鳴り、氏からの「ごめんね」というメール。いじらしい。こちらこそごめんねだ。ごめんね。お互い会いたいとおもっていたらまた会えるよー、かなんか、親指で打ち込む、漂流したまま。
なんとなくそのまま帰宅してからもやりとりが続き、なぜか深夜二時を過ぎてから「これからドライブでも」と氏が言うので、急いで仕度をして車を栃木へぶっとばす。暗く静かな歩道からこちらに手を振る氏を拾い、明けそうな下野の国を彷徨う。走行中の車内で名刺交換をしたり。そのうちフロントガラスにとびこんでくる景色もどんどん白んできてしまい、昼には西の国へ戻るという氏を、もうすっかり朝となった午前六時、ご実家まで送り届け、お終い。
パソコンの画面から初めて氏の容貌を見たとき、なんだかんだ言ってたくせにただのイケメンじゃねえかこの野郎。とおもったのだけれど、会ってみてもただのイケメンであった。畜生。


五日。わたくしのゴールデンウィーク。ていうかデイ。正午まで眠り、IKEAで買ったホットドッグのあれがまだあるのを思い出し、ぼんやりたべる。ピクルスおいしい。ぼんやりしたまま三時間ほどだらだらを極めてしまい、ついに焦燥感が噴出。烈火の如く仕度をして外出。いつものようにただなんとなく、なんとなく茨城方面。もう殆ど無意識。すこしだけ渋滞していて、短気な質なので、いつも目にしていた「雷電神社←」という看板に従い脱線。
雷電神社地震をあれしてくれるところ。なまずさん、というのがあって、なでなでできるように開帳してくれているのだけど、なにしろ家を出るのが遅かったので、前を通ったときにはなまずさんが見えるところに出ていたのだけれど、車を停めている間に閉められてしまい、その恩恵を受けることができなかった。この日までが丁度、御祭りだったようで的屋がいくつも店仕舞いに忙しそうであった。
棲みたいという意味ではないので、そういう場所に実際に生まれ育った方にはあれかもしれないが、すごい空気の町だった。とてもすき。夢の中に居るような、現代でも未来でも過去でもないかんじ。じぶんがあそこに馴染んでいないのをすごくかんじたし、居たらだめなんじゃないかなとさえも。また機会があったらふらり立ち寄ってみようかとおもう。