aとbのあいだ


あてのある放浪。ほんとうは前の晩から千葉へとおもっていたのが、だめだった。夜、ひたすらに眠い。健康でなにより。放浪するとなれば着替えやなにかを適当にバッグに詰め、眠くなったら車内で眠る。そのための寝具も普段から車に積み、それができる車種を選び購入した。それがどうだ、そんなことはとんとしていない、ような。なんとなく気がむかない。朝はにがてなのに、夜寝て早起きしてから行こう、とおもってしまう。健康なのかそうでないのかわからぬ。ついにきょう、車中泊用の寝具を車から降ろした。大丈夫なのか私。仕事で連休がとれなくなり、それができる機会もだいぶ減った。そのために一時的に熱が冷めたのだとおもいたい。
高速道路にのり三郷へ。IKEAの駐車場に車を停め、煙草を吸いながら、特に用もないよなあと話し合う。椅子を美術品だとおもっている私が、ながめたい椅子はここにはないし。結局ホットドッグの材料を一式買うだけに止まる。そのままとち狂いてCostcoへ。入場料だとおもいながら年会費を払いついに会員になってしまった。ブルジョアにまじり商品を物色し、無駄金をつかう。ボンベイサファイアが安かったが、休みもないのにいつ呑めることになるのか。ラムを買い忘れる。


あるひとと話し合ったことが頭から離れず。こたえは、aとbのあいだ。いつでも本気だし、ある種ゲーム感覚。とすれば、私は本気でゲームをしているのか、笑えぬ。すきという気持ちに嘘はない、それがどんな種類のすきであれそのときは本当にすきでいる。ただ相手が振り向いてしまうと、一歩退いてしまう。醒める、とはまたちがうきもする。なんだかわからないので、ひとに聞かれたときは「手にはいるとつまらなくなる」とこたえるようにしている。いざもうひとつ次の段階へいく可能性ができると、たちまち逃げたくなる。怠惰な性格なので、溺れて傷つくのが容易に想像できこわいのかもしれない。そうだ、はじまるまえからいつも、おわる日のことを考えている。よく指摘される。
毎度のことながら彼のことばのひとつひとつのもつ魅力と強烈な印象には恐れいる。「"すきすき"という記号の連発」。あまりすてきに名づけていただいたせいで、その行為もやめられそうにない。
aなのかbなのか、はっきりしない。どちらなのかという結論をまかせたいという気持ちが強い。まかせて、もし違うと感じても、彼のまえでは彼のおもう女でいたいとおもう。だれにも見せぬ核を彼だけに見せたいとおもいながら、またいつのまにか薄い薄い嘘を纏うようなパターン。いちど近づいて、また遠ざかっていく日を想像するとこわい。その日がくるまえに、じぶんで関係を壊してしまいたくなる。またおわることを前提に考えている。

そうか、だから私は寝るのか。寝てしまえば、壊れておしまいになるから。